春の始まり
3月、4月は北フランスの寒すぎる冬、どんよりとした天気、着いた早々の過密スケジュールなどがあいまって、
体調をくずし、仕事をしつつ、残りの時間はひたすら静養する期間となった。
身体的な辛さは、徐々に精神までも辛さの淵に引き込み、それが不眠となって現れ、さらに肉体を疲弊させるという、
思い出しただけでもぞっとするような、暗黒の期間であった。
しかし、春の訪れと共に、症状も峠を越え、少しずつ回復に向かい始めた。
まず次第に晴れの日が多くなり、徐々に気温が上がる。
それと同時に気持ちが緩みはじめ、体も軽くなり始めた。
体が太陽に当たりだすと、体内で滞っていたシステムが活性化し、古いものが洗い流され、傷ついたものがどんどん回復されていくような感覚を味わった。
そしてしばらくすると、あちこちで花が咲いているのが目につきだした。
公園の木々、家々の花壇。
こんな何気ない自然の営みに、人は時に癒され、時に慰められ、そして希望を抱く。
「終わった…長かったけど、ついにおわったんだ」
トラムの車窓から見える、青空と、どこかのお宅の玄関先に咲き誇るカラフルなチューリップをぼんやり見つめながら、
そんな風に思った。
(花粉や季節の変わり目からくる新たな不調のことはさておき)春は素晴らしい時期だ。